<<story.8:IMMITATION・・1>>


あたしとアオ、関係はあやふやで曖昧だ。
消そうと思えばいつでも消せる思い出ばっかり。


どこかへ出かけた事なんてない。
――だって恋人でもないし。

でも、もう友達なんかじゃない。


ただ単に二人でいた時間がかさんでいくだけ。




「アオ・・・?」
「にとな・・ッ」


いきなり押しかけられて、いきなり抱きしめられた。

「ねぇ、何時だと思ってんの」
「朝の5時」
「バァカ、親が起きたらどーすんのよ」
「にとな、くださいってご挨拶する」
「・・・ふふ、ウーソ。誰もいないから、今日」

様子のおかしいアオをとりあえず家に上げる。


寝ぼけ眼で、スウェットに学校ジャージのまま、階段を上がる。
後ろからついてくるアオは不思議と静かだった。




「んー・・何か飲むー・・・?」
間延びしたあたしの声に、クリアなアオの声が届く。

「どうせ酒類は無いんだろ?」

部屋に設置された冷蔵庫、きっと親も見てるに違いない。
そんなもん入ってるわけない。
つーか・・

「あたしー・・・飲酒・喫煙しないし・・ってアレ、言わなかったっけ?」
振り返りながら、ミネラルウォーターを投げる。
アオは器用に左手でキャッチした。


「聞ぃーて無い。他の奴に言ったんじゃん?」
「んー・・・」
ベッドの中に潜りこみながら、何とか記憶を引き出す。

「んぁー、あれユウキだー・・打ち上げの話してー・・・・」
「ちょ、にとなチャン寝ちゃうのー?愛しのアオ君が来たのに」
「はぁー?・・・そういえば何でこんな朝早くからァー・・・・」






「会いたかったから」
真剣な声色に目が覚めた。

「触れたかったから、来ちゃった」
掛け布団を蹴飛ばして起き上がると、真剣な目とかちあった。


「にとな」

名前を呼ばれて、ベッドに二人で沈み込んだ。



あたしがもう一回起きると、そこにアオはいなかった。
きっと、酒でも買いに行ったんだろう。

じゃなきゃ、置手紙でもしてるんじゃないだろうか。



あたしはもう一回、静かに意識を飛ばした。





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