【等身大のラブソング】
ソファに寝転ぶ俺と、その横でテレビを見ている彼女。
「ねぇ」
唐突に、彼女は言った。
「あたし、愛してるって言われた事無いよね」
バラエティー番組の司会者の騒ぐ声が、遠くに聞こえた。
彼女の表情はここからじゃ見えない。
無機質な声からは、感情も窺えない。
「・・あぁ」
確かにな、と答えると、矢継ぎ早に返答が帰って来た。
「何で」
「・・・・・」
「ねぇ」
「・・・・」
「愛してるは重いとしてもだよ?「好きだよ」ですら1回しか言われてないし」
確かに、今まで言葉にしたことなんて無い。
成人式迎えて早6年、変な大人意識は根を張って定着して。
対して、今年成人式を迎えてやっと大人の仲間入りの彼女は違うようで。
酒だって成人式には19だったから飲めず、一週間前始めて飲んだ。
全ての世界が新しくなったような感覚らしくて。
でも、同年代のオトコ共がホストよろしく言うような言葉はまだ欲しいらしく。
甘い言葉を囁いて欲しいんだと。
俺はいつだって余裕なんてないし、6歳も違えば随分と周りだって違う。
そんな経済の過剰ともいえる発展時期に生まれたために、ジェネレーションギャップ。
俺だって、まだ若いんだし。
言おうと思えば・・まあ言うことはできるだろうけれど。
正直、こっ恥ずかしい。
元来からの純日本人、シャイシャイボーイな俺は。
ホストやらアメリカ人の様な愛情表現は苦手なわけだ。
「前もそうだったじゃん」
プツン、とテレビの電源が切れる。
ほぼ同時に、俺は起き上がって、彼女に向き直った。
大きな瞳が、非難を含んで俺を見ていた。
そういえば、前もこんな話で喧嘩した。
付き合う時も、
『好きだから付き合ってくれ』
のような、原因結果の分かる方法なんかじゃなくて。
寧ろ、彼女が俺に熱をあげてくれていただけで。
だから、彼女は付き合って丸一年、俺の気持ちが分からなかったわけだ。
喧嘩して、仲直りは勿論俺が台詞を吐くこと。
俺は10分もかけて、やっと言葉を搾り出した。
それが丁度一年前。
そして一年後の今日、また同じことが繰り返されようとしている。
「26にしては硬派すぎるって。昭和のオトコじゃんかー」
「俺は昭和生ま」
「あたし平成だもん」
「・・・・」
再び、ジェネレーションギャップ。
6歳という年の差を、一番感じているのは俺かもしれない。
いや、確実に俺だ。
「ねぇーってばぁー」
「・・・・・」
「ちょ・・こんなんじゃ騙されないんだから!」
口調とは裏腹に穏やかに瞼を閉じる。
背の低い彼女はすっぽりと俺の腕の中に納まってしまって。
「聞ぃーてんの?」
言葉数が多い彼女。
対し、話すことが苦手な俺。
「・・・もぉー・・」
彼女の小さな手が、背中に回る。
その温度を感じながら、腕に更に力を込める。
「・・・あたしのことー・・・愛してる?
「・・・・あぁ」
彼女は、はぁと溜息を吐いた。
「もうちょっと待っててあげる」
end.
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こんな感じです。
超SS☆ミ
今回は、大人と子供ーで。
乙女の日企画の「Kiss Only One Lady」は女年上〜だったので。
今回は男年上〜でいってみました。
「Kiss〜」は七歳差で、今回は六歳差です。
でも、どうでもいい裏設定で、二人とも早生まれなのでほぼ五歳差です。
イメージとしては、女の子が2、3月で男のほうが1月の初め。
成人式の事書いたから、きっとこんなイメージ。
若いとポンポン言葉を言い合うイメージが強いみたいなので。
すぐに付き合っただのー別れただのーってテレビじゃすごいですよね。
そんな時、「最近の若いのってさぁ」と呟いていた某知り合いの言葉を思い出してみたり。
二年前22歳だったその某知り合いは、今24ですか。おお。
そんな関係無い事を考えながら、書いてました。
ヤツに彼女いたら言わなさそーだなぁとか。
初めてモデルがはっきりして書いたモノだったかと。
でも、モデルはここまで硬派じゃないです(笑)
あーでも書き終わっちゃうと全然違う人だなぁー・・
もっと精進します。(ぺこり)
・・・超SSなのに、今までで一番あとがきが長いです(ワラ