「早く、早くっ!」
「結姫ぃ・・そんな慌てなくても桜は逃げねぇよ・・・・・」
「だって、休憩時間あと一時間しか」
「隊長、大丈夫ですよ。飛羽隊長さえ来なければ・・・」
「アタシが何だってのぉ?祐ちゃん♪」
「あ゛・・・・」
春爛漫
冬過ぎて、春近し。
そんな時期を少し過ぎて、肌寒い日が合間見える今日この頃。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
只今、日が高くのぼり、太陽が煌々ときらめく今日ですが、相変わらず私どもは・・相変わらずです。
そんな書き出しで始まった文章も、徒然なる日に書いたが為。
そうでなくとも、この地区に居る限り愚痴に変わったのも当然の成り行きだった。
「たーすーくー何してんの?」
「あ、隊長・・って!貴女が書かないから俺がこーやって・・」
「まぁまぁ、そう怒るなよ祐。折角のイケメンが台無しだぜ?」
「(い・・いけめん?)散葉も隊長も、相変わらずですがちゃんと仕事して下さい!」
相変わらずの日々が続く、善悪滅判所の東部地区。
相変わらずのノーテンキ・マイペースの隊長、天魔結姫に
相変わらずの几帳面で苦労人、所内のおかん的存在の隊長補佐、椎名祐に
相変わらずの阿呆路線つっぱしりな13歳児の三席、桜井散葉。
この3人によって形成されている支部は、笑い声と溜息が絶えない。
「定例会の時期です。時節柄、皆様多忙と思われますので・・・」
「うっわ、スゲー。祐、難しい漢字とか言葉ばっかだな!」
「本当にねー。羨ましいなー」
定例会というのは、格地区の隊長〜三席までのいずれか2名以上が出席しなくてはならない会議である。
毎回、定例会が開かれるのは総部とよばれる地区と決まっており、
それは東部地区が確立された時から東部地区と決まっていた。
所員の中でも、一隊十三人で構成される十の隊に入れるのは一部の力保持者のみで、
確実に力のあるものしか入れないという狭き門、しかも東部地区はレベルが高い。
しかし、死者が多いのも現実で、志願者をみすみす死なせるわけにはいかないという配慮から
毎月一回文を交換して相談しあう。また、何か事件が起こったときも同じく。
しかし、文だけでは解決しない事も多い。
よって、三、四ヶ月に一度定例会を開き、トップ会談となるわけである。
祐が書いていたのは、その案内状である。
「隊長多忙の為、代わりに私椎名祐が筆を取らせて頂きました・・ァ?
かってぇーなぁー。将来生え際絶対やべェってぇー・・・祐がハゲんの見てみてぇ・・」
「えー、祐ハゲんの?あっ・・染物屋の徳さんと同じのだ・・・まだ三十路前なのに・・」
「バカ結姫、そーゆのは若ハゲっつーんだよ。安樂に習ったぜー」
「硬くとも、なんでも良いんですが・・。じゃぁ、予定していた今週末の花見も無しですね」
「「!?」」
「何を驚いているんです?娯楽より本業の執務と業務・指令を出しませんと。」
「一日くらいどうにか・・」
「十隊への指令書<討伐十件・護衛三件・捕縛二十二件>をまず書くのに二日かかります。
そして、今回我ら零隊に課せられた使命である<討伐五件>はそんなに難しくないので一日。
新たな志願者、華期卒業生千二百五十七名から壱〇八名を選任します。
今までの経過からみて、確実に二日以上はかかる作業です。
更に定例会は毎回の如く酒盛りになるでしょうから、ちゃんと話し合えるのが
西部の綴喜三席と、北部の双牙隊長と俺位になります。よって一日は確実にかかります。
・・・・よって五日後に予定していた花見は中止せざるを得なくなります。分かりました?」
まるで、マシンガントーク。
普段からあまり口数は少ない方ではないが、ここまでまくし立てるとは思わなかった。
祐の完璧なマネージメントのお蔭で、二人は「なんか無理らしい」という所まで理解できたらしい。
「むー・・今度開いてる日は?」
「そうですねー・・雑務で六日はかかります。新しい手配書が出されるのが丁度その頃なので・・
新たな十隊と我らの使命を配分し、遂行して・・約三日です。その翌日なら一時間だけ空いています」
祐は眉間に人差し指を当てて記憶を確認しながら、言葉にだしていく。
「はァ?一時間?」
「今までの平均時間を考えるとそんなんですね」
そう言いつつも、案内どころか三件分の討伐命令書を書き終えた祐がすんなりと言う。
「えー・・どーにかなんないのかよォ・・」
「今話している時間を仕事にあてれば、多少は空くんじゃないですかね」
「結姫ちゃんが山菜御膳、祐君がさわら御膳、散葉ちゃんが天ぷら蕎麦だね?」
「はいっ、御代は・・・」
となりの食堂を経営しているおばちゃんが、確認しつつ丼を置いていく。
いつもなら、これってどこどこの器だよねー、など話が弾むのだが今日はそうはいかない。
「いやいや、お仕事忙しいんだろう?お夕飯くらい暖かいもの食べないと・・・
あたしたちの生活護る為に働いて下さってんだからお代なんてとれないわー」
「おばさん・・・ごめんっ、ありがとー!今度討伐先のお土産持ってくから・・」
すまなそうに見る結姫に、おばちゃんは笑顔で仕事を進めるよう促した。
「はいよ、お膳はいつもどおり出しておいて」
「はぁーい!」
そう叫びつつ、手元は凄いスピードで動いている。
結姫と散葉は、祐の大変さを身に沁みて感じたようだ。
ただ、これから手伝うかと聞かれれば・・・おそらくは。
「唯一の治療隊の第参隊の大型新人の鎚谷っちとベテランのシューを組ませて、
この間の有力証人の十歳の子とその親の護衛を。あと、武力隊の中堅のさっしーつけて!
後の護衛は、第参隊のみっちゃんと第九隊の三席さんで一組、隊長と第八隊の緋香里君で一組!」
テキパキと仕事を進めていく結姫。散葉は口をあんぐりと開け、祐は感動すら覚えている。
「た・・・隊長がちゃんと仕事をなさっている・・・」
「やればできるんだなぁコイツは・・」
半放心状態の祐の横で、散葉はうんうん、と頷いている。
祐が何かを散葉に言いかけたとき、結姫が紙の束の中から祐に話しかけた。
ちなみに、結姫が持っている紙の束は十隊――壱隊十三人――よって百三十名分の資料である。
「あーっ、祐!あーちゃんって第何隊?あと役職・・」
「あー・・ちゃん?」
脳に、あーちゃんという人物の検索をかける。ものの数秒で出てきた。
「安植なら、第七隊で第五席ですよ。過去題参隊の沼間と組んだのが一番多いようです」
「沼間ッチね?おっし、これ全部書けば十隊への指令書はカンペーキ!」
結姫は狂喜しつつドタバタやっているのを見て、祐はふと自分が言いたかった事を思い出した。
「散葉は何をやったんだ?」(ニッコリ
「・・・俺三席だし・・・あんまり勝手に決めちゃいけないかなぁって」
「三席といえど権威は他の地区の隊長格と同じだ。
まぁ、多少散葉は若いだけあって血気盛んだから一言確認は欲しいが・・
じゃぁとりあえず、隊長が読み上げられたのを全部紙に記してくれるか?」
ラジャッ、と高らかに叫んだ散葉は和紙と筆を持って結姫の元へ走る。
結姫から感謝の言葉が飛んで、祐は微笑んで席についた。
「あっ、祐はー?オレは結姫手伝うから楽だけど、休んでいーぞー」
「いや、俺は討伐・捕縛完了確認書を書いておく。あとは終了の印を押すだけにしてな」
「おーっす!絶対花見いこーなー!!」
「・・・・あぁ」
仕事を始めてから五時間ほど。現在申(さる)の刻を少し回ったところ。(要は八時くらい)
あと、三件の<護衛>を書き終えられれば、とりあえずは一旦休憩だ。
「隊長・・・ぁ」
「シーッ、今さっき寝ちまって・・でも仕事は終わったぜ」
「そうか・・慣れない事なさったからな。自業自得ですよ隊長・・・」
「それ、何気に暴言だぞ・・?」
そんな二人のやりとりが続き、結姫はそ知らぬ顔でグースカ寝ていて。
散葉に寝るのを促したあと、祐は愛刀「怒奴」を握り、懐刀「核真和道」を持って支部を出た。
「良い夢を」
「氷千・・斬!」
「グゥアァァァアァァァアア!!」
「ふっ・・あー・・・やっと終わった」
へたり込む祐の額には汗が。袖で拭って時を窺うともう花見は四日後に迫っていた。
最近はずっと事務職で、一日中座って何かを書いてばっかりだったので身体がなまってしまっている。
「あとは定例会と選任だけ・・・選任の会議だから壱〇八名選出してから・・」
(待てよ・・選任を三日で終わらせて、定例会を一日で済ませれば花見に行けるか・・・
でも、あの隊長達が絡んだら・・なんとか今日明日で任命は終わらせよう・・
西部の咲矢隊長、綴喜三席、東部の双牙隊長、吾妻野三席、南部の飛羽隊長と・・)
「師走さんは?あの南部の期待の新人の七席ちゃん」
「ああ、あずき・・師走あずきか・・・そうしましょう」
「え、知り合い?」
「学舎の後輩です」
十九歳の祐が五歳だった頃、特別幼児養成学舎に入学させられた。
そこで、まだ歩き始めたばかりの女の赤ん坊の世話と育成をさせられた。
どうやら捨て子らしく、小豆粥ばかり食べていたので、祐があずきと呼び始めた。
それがきっかけで名前があずきとなり、氏が師走の月に拾われた事から師走となった。
祐からしてみれば、年のそう離れていない、手のかかる妹のようだ。
「お疲れ、祐」
「討伐五件位で疲れるなんて俺もまだまだですよ、隊長」
振り返った瞬間、的確に投げられたタオルが頭を包んで視界を奪う。
そして、一瞬ちらと見えた愛しの方を、タオルを取ったことで明確に見られる。
「あれ、気づいてた?」
「あたりまえじゃないですか・・貴女の気は分かりやすいんですから」
タオルの感触が心地いい。
「そういえば・・なんでここへ」
「ひとりで抜け出すなんて反則。起こせばいいのに」
「いえ、でも絶対花見行きましょう」
「うん」
二人で歩く帰り道、散り始めた夜桜が綺麗に咲いていた。
「さむ・・・・っん?」
「冷えると御身体に支障がでますから」
「でもたす」
「俺の事は気になさらないで下さい」
女の子よりは、頑丈に作られてますから。
さらりと言って、自分の羽織っていたものを結姫に着せる。
「ありがと」
そっけなく言ってみたお礼の言葉。
照れ隠し・よけいに恥ずかしい。
ちょっと触れた、冷たくなった手。
・・・ぃちょ・・・た・・ちょ・・・・
「むにゃ・・・?」
「あっ、隊長おはようございます、散葉、起きろ」
「ぁう〜」
祐は散葉を足蹴で起こすと、寝ぼける結姫に水を手渡した。
「ふぅ・・?」
「咲矢さん、吾妻野さん、師走さん起きてください・・」
「あっは〜、そんくらいでヘバんなんて、あんたらよっぽどの下戸だわねぇ。
特にあずき。あんたはいっつも飲ませてんでしょーん?こんくらいで酔うんじゃないわよ」
安樂は飄々として、手に持ったコップの液体を飲み干す。
すると腰から下げた瓢箪(ひょうたん)のようなものからまた、注ぐ。
「あっ、結姫ずりぃー・・祐のえこひいきぃー」
「待て散葉、水なら今・・・・あっ、咲矢さん寝ないで下さい!吾妻野さん、ここは厠じゃな・・」
「散葉チャン喉渇いたのね、はい」
安樂は妙な笑顔で散葉近づくと、コップを手渡す。
「(キモチワルイ位優しいな・・?)ぉぅ・・ありがと・・・ぶはっ」
「や〜んも〜・・散葉チャン汚いわよ」
安樂は片目を瞑って、扇子を顔を隠すように開いた。
散葉はといえば、コップに宙を舞わせて。本人はベッドへ再びダイブした。
喉を両手で押さえて、喉からスースーと息を漏らしている。
「何だこれ・・かぁーって喉が・・(ぱたり)」
「んふふ・・散葉チャンったらかーわいー顔してるわぁ〜ん」
安樂は、倒れた散葉に覆い被さって顔をまじまじと見つめる。
若さゆえの肌の綺麗さを確かめるように、人差し指を肌に滑らせる。
「安樂さん何脱がせてるんですか!?散葉も抵抗し・・・(状況を理解)
そ、そもそも貴女三十・・げふん!年下の男に興味は無いって言ってたじゃないですか!?」
近づくと餌食になるため、少し距離を置いて話しかける。
三十、というキーワードが出た瞬間にギラリと睨まれた為に話を変えた。
「ん〜・・」
安樂は唇と唇が触れ合いそうな位の距離で、散葉を見遣る。
「だいたい、散葉の事いっつもチョロチョロしてるおこちゃま、とか言ってたじゃないでっ」
「認識が変わったわ〜」
「に、認識!?」
気絶したらしい散葉の唇を撫でながら言う。
「可愛いじゅうさんさいのオトコのコって感じぃ〜かしらん?おねぇさん色に染めたぁいわぁ〜ん」
かいたい(買/飼)、などとヒートアップする安楽を散葉から引き剥がそうと、
祐はすこし近づいた、これがいけなかった。
「安樂さん・・(汗だく)その前に、散葉に何飲ませ・・ぶっ」
「も〜ぅ、折角のいい男が台無しよ」
「ばばびべぶばあび!びぶばばばばぼ・・(話してください!散葉が倒)」
「ひとの胸に顔埋めながら喋んないでよぉ〜えっちぃ」
「・・ばばびべぶばばび・・(離してください)」
貴女がやったんでしょう、そんな常識的なものは通用しない。
そもそも、なんでこんなにも隊長格は阿呆ばっかりなんだ(暴言)
ストッパーになれるのが、双牙さんと俺しかいないのが手痛い。
「・・ふぁ〜・・あれ、花見・・!!」
「あらぁ〜結姫ったらお目覚めぇ〜?」
ピシッ・・・(場が凍る音)
「祐・・何やってんの(ゴゴゴゴ・・・)」
「びば、ばいびょー・・(いや、たいちょー・・)」
「だからぁ、喋っちゃいやっていってるのにぃー・・・えっちなんだからぁ〜ん」
「・・・・・・」
「ご、ごめんね祐・・にしても安樂が散葉に純度の高いお酒飲ますなんて・・」
「いえ・・」
顔にはアザと薬草が数多にあり、表情もどこかぎこちない。
「だってぇ、喉渇いたっていうからぁん♪」
「バカじゃねぇの安樂・・オレ酒あんま強くねぇんだよ」
「最初に潰れたのが師走さんで、その直後に潰れたのが散葉、お前だもんな」
「ちゃんと話し合いできたのが、私と双牙隊長と椎名副隊長だけでしたから・・」
「すまなかったね綴喜君。うちの隊長とバカ三席が・・」
「いえ、西部(うち)の隊長も・・手が付けられませんから」
唯一ちゃんとしているのは西部の三席、綴喜博忠だけであり。
全く飲まない双牙さん、嗜(たしな)む程度の綴喜君、
異様に酒に強い祐の三人で結局はいろいろと決められるのだ。
安樂は結局ずっと飲み続けていて、潰れない代わりにちょっかいを出して会議の進行を遅らせる。
結姫・散葉・あずきは潰れて、咲矢は絡んできたので祐が手刀で黙らせた。
「しっ、椎名先輩!折角指名して頂いたのに申し訳ありませんでしたぁぁぁっ」
深々と礼をしているのは、南部の七席の十五歳、師走あずき。
使命感に燃えているのではなく、ただ恋心と憧れと下心だけである。
「あずき、そんなに謝る事は無い。そもそも、すぐ謝るのはあずきの昔からの悪い癖だ。」
コツン、と軽くあずきの頭に拳を当てると、あずきはへへっと悪戯っぽく笑った。
年相応の可愛らしい笑顔に、祐も自然と微笑む。
「あずきも大きくなったな、今では全支部の五本指に入るほどの切れ者とまで言われている。
小さい頃はいつも俺に将棋で負けて・・あたしはバカで生きていくもん!なんて言ってたのに」
祐が笑いつつ、昔の思い出を口に出しながら確認していると、
「あと、祐兄さんのお嫁さんになるのが夢だったんです」
あずきも、余程祐と過ごした時期が思い出深いのか笑顔で乗ってくる。
「ああ、いつも婚姻の儀をしてくれって言ってたな・・懐かしい思い出だ」
「でもやっぱり統監補佐さまと、ただの七席は幾ら仲良くても敬語ですもん・・」
思い出の中の自分は、ただお兄ちゃんが大好きな一人の女の子だった。
祐もまた、血の繋がりは無いが妹想いの一人の少年だった。
でも今は・・・名を聞けば皆が振り返るほどの偉いお方になってしまった。
あずきは、哀しそうな目で俯くと、でも祐に笑って見せた。
「気にするな、いつでもお前は俺の家族同然なものだからな。
ただ、公的な場所では敬語の方が良いかもしれないが・・」
「そ、そんなっ・・勿体無さすぎるお言葉ですっ・・!(クラリ)
いくら兄的な存在でしても、あたしにとっては偉大な先輩ですからぁ・・」
「おい、大丈夫か?」
「ああ、先輩があたしを抱きとめてくださってる・・?ああんもう死んでもいい・・」
「?」
昔の学舎の愛しの先輩。そして密かなアコガレを持っていた兄的存在。
しかも、いわゆるトップ会談である定例会に、七席の自分が出れるとは。
なんせ、祐があの最悪最禍な新設東部地区に行ったときからの夢だった。
いつか、自分も隊長格まで上り詰めて同じ会議に出ようと。
そしてそれも、最近の事だが通称「一文字」に任命され、七席の称号を頂いた。
ひとつの文字で表せる席になれるのは九人までで、隊長から九席まで。これを「一文字」という。
しかも「一文字」に任命されると、自分が「首長」とよばれる隊が持てる。
夢に踏み出したと思ったら吃驚ラッキーパンチ。
「あずき・・またどこかへトリップしてるのか?」
「先輩・・流石分かってますね」
「何年の付き合いだと思ってるんだ。もうかれこれ・・」
「十四年ですよ。物心ついたときから先輩と一緒にいましたもん」
「そうだな、真能力開発所時代の前だから・・俺が伍歳の時か」
昔話に花を咲かせる二人を見ているのは安樂と、散葉と、結姫。
寝たふりと、じっとみているのと、怖くてみられないのと。
「あの女なかなか積極的だな」
「んん〜、さっすがはアタクシの部下だことぉ♪
普段から教え込んでるだけあるわぁ・・いざというときもダイジョブにしてるわん」
「(どういう時だよ・・)安樂、お前」
「あは〜んvやっぱりおこちゃまね」
「・・・・・・」
「結姫ちゃんも行くとき行かなきゃぁん☆」
「・・・・・・・はい」
結姫はそろりと二人を見た・・窓の外には、青々とした葉をつけた桜の木・・・さく・・さくら・・
「ああーっ!!」
「隊長?どうしました!?」
あずきを立たせると、祐は結姫の元へ駆け寄る。
「お花見は・・?」
「覚えていらっしゃらないので・・?」
「え・・?」
「だって・・貴女は・・・・
『はー、やっと終わりましたね』
『流石椎名副隊長と双牙隊長・・選任が完璧です!』
『せやな、完璧主義だからや』
『綴喜君もありがとう・・』
『なんでそんなに焦ってたんです?椎名副隊長は』
『いや、うちの駄々っ子二人が、どうしても花見に行きたいと言って・・』
『いつ行くんです?』
『明日に』
『たーすーくー♪飲もうよぉ♪』
『隊長?飲みすぎですよ・・明日花見なんでしょう?』
『いーのいーの、飲むろぉ!ほれぇー勝負りゃぁ』
だと」
「えぇ・・今から行けない?」
「・・・今からですか?ええと」
祐が急いで予定の書きこんである自作カレンダー(の様なもの)を見ようとすると。
「天魔総統監殿、椎名統監補佐殿、桜井東部三席殿!
伝令承りまして、内容が魔物討伐だそうです!
出所はアドマイア・グラウンドの中央部の「央納(オウナ)」です」
いつもの伝令さんが来て、硬い表情で語りかける。
「無理みたいですね」
「・・・・ぅう・・」
嫌がる結姫を立たせて、運んでいくは仕事場所。
極貧までとは行かないが、隊長という役職のイメージとは異なって・・
徒歩である。
そう、自分の足で場所まで延々と歩くのである。
普通は・・・言うまでもなく、人力車のようなものだったり、使い魔だったり・・
(使い魔を使う場合は申請をして、使い魔使用代というバカ高いものを払わなくてはならない。)
「魔物・・比較的強い部類のものですね。攻撃への耐久が強く、体力も多い」
「ふーん・・・どいつでもいいけど、折角の花見を・・(ゴゴゴゴゴ)」
しょんぼりしていた先ほどの姿とは相変わり、背中になにかのオーラを背負っている。
「は、はぁ・・(汗)」
「「「いたぞー・・みんな逃げろ!!」」」
「あっちね」
「ですね」
「オゥ!」
「雲仙桜吹雪!」
『ぐぁッ・・』
「うんぜんさくらふぶき?」
「散葉いいでしょー。これ新技なのー」
「でも、もう新芽でてますよね・・・」
しかも、たしかウンゼンっていう山があったような・・・
そう言う祐を完璧無視して、結姫は刀を鞘におさめた。
「うるさいっ!いーのー」
『・・・・?』
「はぁ・・・」
「じゃぁオレはー・・・散桜空舞ィ!!・・・どーよ」
『グァァァァ・・・・!!』
「刀に風のせて花びら舞わせるって、すごく綺麗」
「祐も作れよー」
「そうだよー」
「そうですねー・・・」
『グァ・・・・・グァァァァァァアァア!!』
断末魔の叫びと化した鳴き声を轟かせ、魔獣は祐へ向かって動く。
「んー・・と・・・・」
「祐!危な」
魔物が祐に触れようとした、その瞬間。
散葉の技で地に落ちた桜が鋭く曲がり魔物へ向かう。
『グャァァァァァ・・』
「どうです?技名はー・・そうですね。氷桜(ヒザクラ)」
「コオリ・・・ほんとだ。桜が氷で覆われてる」
「あ、今なら時間ありますから花見」
「天魔統監殿、新しく発見された魔物が町を荒らしているようです」
「「「・・・・・」」」
「二度あることは、三度ありますね」
そして、花見にいけたのは、それから二週間後。
日は卯月を少し過ぎたばかり。
「なんで皆で来たわけ?」
「いいじゃないですか、隊長・・ぅわっ誰!?」
「祐兄さまvあずきですよぉ」
桜吹雪・春爛漫。
「祐、オレはお前が羨ましいね」
「はっ?・・ていうかあずき、離れてくれ。荷物が重い」
「いやですぅー」
「お前、よく天下無双の椎名統監補佐を名前呼びできんなー。
ただの七席、しかも比較的治安のいい南部支部なのに・・・」
つまりは、そんなに格は高くない、という。
散葉の本人が気づかない皮肉ではある、あずきも天然なので気づいては居ないが。
「オレと結姫と大地くらいだぜー、呼び捨てできんの」
「あずきと祐兄さまの仲ですもんねっ♪」
「・・・師走さん離れたら?祐だって荷物重いそうだし」
「だったら隊長さんが持てばいいじゃないですかー。
あずきなんかより、よっぽど化物じみた力あるそうじゃないですかぁ。
公の場では椎名統監補佐、少し砕けた場では椎名先輩。
プライベートでは祐兄さま、なにか問題でもありますかぁ?」
バチバチバチ
「あーもう何でもいいから助けてくださいよ・・」
「で、結局酒盛りとなって潰れるわけですか」
「祐・・仕事大丈夫なの?」
「大丈夫・・・なわけないですが・・まぁいいじゃないですか」
青々とした桜をみながら、祐が呟いた。
昼から一時間約束の花見も大宴会となり、今はもう夜。
酒盛りで酔いつぶれていた者達も参加し、あの安樂までもが潰れてしまった。
今、起きているのは。
皆をセーブするため(無駄に終わった)飲まなかった祐と
あずきの存在が気になって飲むどころじゃなかった結姫だけ。
「綺麗だねー・・夜桜」
「そうですね・・」
沈黙が嫌で、そして言葉が続かない。
なんとか沈黙を打破しようとお互いに何かしら試みるが上手くいかない。
二人きりになったとたん、なんで話せないのだろうか。
「あの、隊長」
「なっ、何・・・!?」
「散葉が、妙な事を言っていたので」
「み、みょうなこと?」
「隊長が最近悩み事で心を痛めておられるとか」
「な、やみごと?」
「しかも・・・原因が俺だとか」
「・・・え、そんなこと無」
「嘘を仰らないで下さい。
散葉は、最近隊長が悩んでいらっしゃる事を言ったあと、俺が心配だと言うと
『これだから鈍感君はイケナイね、原因がそんなこと言っちゃぁお終いだ』って」
(あのガキ・・・絶対シメる)
「隊長」
「えっ、はい!」
「至らない点は言っていただければ直すように努力はします」
「いや、あのね?」
「で、はっきり仰って頂きたいのです。貴女が俺をどう思っているのかを」
「・・・・」
「だめっ!兄さまはあずきのものなんですからー」
寝ぼけ眼で結姫を睨むは師走あずき。
「べっ、別に師走さんの「物」じゃないでしょ」
思わぬ邪魔に、結姫は内心苛立つ。
そして、我も負けじと少し強めの語調で言い放った。
「相思相愛ですもんねー?に・い・さ・ま!」
「いくら十四年の付き合いでも、あたしはこの数年間ずっと一緒にいたもん」
「はっ、仕事でですよねぇ。あずきと兄さまは」
「あずき、俺は今隊長と話しているんだ」
投げ交わされる女の意地の張り合いを止めたのは祐の鶴の一声。
まぁ、彼はこの話の中心人物が自分であることを分かっていないが。
「・・・兄さま」
悲しそうな顔をしたあずきは、もう少なからずとも二人の関係が分かっているようで。
二人は互いに、想いが届かぬものだと思い込んではいるが、実は想いあっているという事。
もう一息で、恋人という地位についてしまう事。
そして、自分がその決定打になってしまったことを。
「隊長は、まだ聞いては居ないが俺の所為で苦しめられていると聞いた。
隊長に仕える者として、また忠心を誓ったからこそは正さなくてはならな」
「ち、違うの」
「何が違うんですか隊長、俺に気遣いなどして下さらなくて」
「違うの!その・・・や、ヤキモチってやつで・・・ね?」
「・・・・・・・やきもち?」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ああ」
分かった様子の祐に、あずきはため息を、結姫は顔に朱を注いだ。
し
か
し
。
この鈍感オトコをナメてはいけない。
「大丈夫ですよ、隊長。
俺はいくら妹のようなあずきが居たとしても、南部などには行きません。
貴女の下で働いていける事を、我が命の誇りとしていきます、これからも不変に」
違うって兄さま
こっっの・・・鈍感男め
「ねえ、隊長さん」
「何」
「・・・まだあずきは認めません。
貴女と兄さまが婚姻の儀を済ますか、兄さまから貴女への愛の言葉を聞くまで、諦めません。
だって、あずきと兄さまは血のつながりはありませんから。あってもそんな重要じゃないですけど」
いやいや、重要ですけど(汗
「・・・・それは難しいね」
「でしょう?だから、あずきは諦めません」
「・・・・・・・」
「おはようございます、本日の文になります!」
「ああ、お早う」
「椎名統監補佐殿、本日も朝からお疲れ様でございます」
「いやいや、君こそお疲れ様・・隊長、文が参りました。散葉、仕事だ」
「へーい」
文を分別して、内容をまとめあげるのは散葉の仕事である。
散葉は返事をすると束を受け取り、丁寧にお辞儀をする文運びに会釈した。
「んあ・・・おい祐、お前宛」
「誰から?」
「南部の七席、師走あずきだとよ・・・・結姫も大変だな」
「・・・・(シメんの忘れてた・・)」
拝啓、祐兄さま・天魔隊長どの
前略いかがお過ごしでしょうか、あずきは元気にやっております。
祐兄さま、あずきは兄さまのことを忘れたことは一秒たりとも御座いません。
なぜならあずきと兄さまは(略)
こんど、こちらでなにかあるときは是非お越し下さい。
あっ、そういえば天魔隊長どの。
あずきは押せ押せなので、せいぜい負けないようにがんばってください。
相手が、こんなにも難攻不落だとお互いに苦労しますよね。
ま、付き合いが長いあずきのほうが断然有利ですけど。
ではでは、兄さまvと我が好敵手である天魔隊長どのへ。
あなたの親愛なる妹・好敵手 師走あずき
敬具
「・・・まけてらんないわね」
「負ける・・・!?た、いちょ・・・・」
ほんの一瞬だけ唇に触れた、感触。
散葉からは何も見えなかった、が。
「あたしも押せ押せで行くんだから。
負けても泣くんじゃないわよ、あずきちゃん?」
****************
やっと感想かけました。
え、今日は何日かって?
五月二十日です。書いてから結構経ったね。
・・・・・・あははは(苦笑/殴
しかも、今日慌てて背景つけたってどうよ。
痛いね紗恭ちゃん。
しかもあんたさ、テスト前だよね(もっと痛
ちゃんと勉強しろよ(本当に
で、内容はですねー(内容まで長ッ
安樂さんに、散葉を襲・・ごにょごにょ。
それが書きたかったんです。ええ。
結姫と祐は二の次・・ごふっ!!
あとね、結姫ちゃんには本編で何人もいるから。
たまには結姫にヤキモチ妬かせてみようかと。
で、生まれたのが師走あずきです。
え?お汁粉が食べたかったから。あと、紗恭が赤飯好きだから(爆
冗談じゃないです。嘘でもありません。(きっぱり
でも、これだけじゃTWICEあんまし分かんないですよね。
時代背景とか、人物設定とか。
いや、数人はオフで読んで頂きましたが。
でもオフで読んで下さった方々も、きっと「おわっ」て思いますね。
内容とかの前に、大量に加筆・修正したから。
だって・・・恥ずかしいやあれ。
後日人物設定アップするとか言っておきながら酷いですね。
まだ主要人物さえできてましぇん。
テストまであと三日だしなー・・・
また試験終わったら書きますや。
誕生日プレズェントも書いてないし(最悪
今までで一番長い後書きだぁー・・