「雨かよ・・ついてねぇ」
そう呟いた貴方を見て、こっそり微笑む。
降水確率60%。
どっちに転ぶか微妙な所だったんだけど・・
どうやら、女神様は私に微笑んで下さったみたいだ。
constellation count down TV!!
-今日のアナタの運勢は?-
『本日七月七日の占いカウントダウンは・・・』
毎朝見る、綺麗なテレビアナウンサー。
彼女の形のいい唇からは、聞き取りやすい、綺麗な音が響いてくる。
爽やかな印象の可愛い女性、まさに憧れの対象。
『今日の一位は〜おめでとうございます、双子座のあなた』
彼女の唇に塗られた淡いピンクのグロス。
梅雨のじめじめしている空気でテンションが低い朝でも、
彼女の顔を見れば吹き飛んでしまうだろう。
可愛い笑顔のひと。
『二位は蟹座の貴方、今日は北に吉!落ち着いて行動すれば・・』
北が吉って言われてもね。
内心少し突っ込んでみた。
北極にでも行くしかないんじゃないの。
そんな事をいいつつも、自分の星座が早くコールされて欲しい。
次か次かと待ちわびながら、少し冷めたトーストを口に運んだ。
『・・・三位は』
流石はブラウン管の中の人間・・・
確かあのグロス、昨日発売したてのお値段の張るものだ。
買っちゃおうか、そう考えながら硬くなったベーコンエッグを箸で突付く。
『乙女座のあなた!ピンチの時は誰かが助けてくれます。
今まで言えなかった事を打ち明けると、きっと願いは叶います』
あ、アイツだ。先越されちゃった。
でも、60%の確率でこの占い当たるかも。
そう思うと可笑しくなった。
アイツも確かこの時間は・・・この番組を見ている。
勿論、私がさっきから凝視してるこのキャスターさん目当てで。
『・・・第十位は水瓶座のあなた』
微妙な順位・・そう思っていると携帯が鳴った。
「はい、あ・・・え、今日私掃除当番だっけ・・うん・・今から行く!!」
買ったばかりの薄い緑のスーツに身を通して、履き潰したパンプス履いて。
お気に入りの薄いピンクの傘じゃなくて、紺色の男物っぽい傘を手に取る。
鞄を掴むとテレビを消して、台所に食器を慌てて運んで。
「いってきまーす」
誰も居ないマンションの部屋に向かって一言。
占いは当たりそうだ。
お天気お兄さんのタカハシさん、お願いします。
「眞姫・・あたし電話したのに」
同期の美紗は同僚であり愚痴相手であり。
彼女とこの会社に入社してから早くも五年。
出会った時は、二人とも右も左も分からないピチピチの二十二歳。
今となっては、曲がり角を目前にした呑気な私と、
曲がり角が見えないうちに曲がりそうな美紗、二十七歳。
彼女には結婚を約束した婚約者がいて。
彼がアメリカの支社から帰り次第式を挙げるらしい。
半年の長期出張も、梅雨とともに終わる。
式があと二ヶ月と迫っては、美紗も随分とご機嫌になるわけだ。
「ゴメン、美紗。多分お風呂入ってた」
「朝から?ああ、梅雨だもんね」
ううん、ちょっと違うかな。
だって今日は、60%雨が降るから。
そんな事を言ったらどう思うかしら。
きっと不思議そうな顔をするに違いない。
「天宮さんが遅刻だなんて珍しいですね」
「野江君も、ごめんね」
新入社員の野江君、真面目そうな二十三歳。
彼も、同期の友達もすでに掃除を始めていた。
曜日別の掃除当番はあと一人・・・
「おー、さすがだ。みんなそろってんな」
ヤツがやって来た。
「眞姫は遅刻で一之瀬君は大遅刻よ」
美紗が言うと、一之瀬はけたけたと笑った。
「どーせ天宮と二、三分しかかわらねーだろ」
「そりゃぁ・・そうだけど、何で」
「コンビニで煙草買ってたら目の前を天宮が通った」
傘立てを見ると、四本の傘が突っ立っている。
バーバリーっぽい傘は美紗のもの。
黒で取っ手が木の男物の傘は野江君のもの。
少し大きめの紺色の傘、私の。
・・・一之瀬め、コンビニでビニール傘買ってきたらしい。
あーもう、流石は十位なだけあるわ、水瓶座・・・
「煙草ねぇ・・」
訝しげに呟いた私に、一之瀬は不思議そうな顔をした。
「ああ、眞姫は煙草のにおいとか駄目なのよ」
美紗が補足をする。
すると一之瀬は、上着を脱いで机へ放った。
「掃除当番なんて学生思い出すよな・・
普通はこーゆーのやんのって業者なのに」
ぶつくさ言いながらも給湯室へ向かう一之瀬。
そして私達も散り散りに掃除を始めた。
定時、五時を迎えた。
新入社員の女の子達は合コンだのカラオケだのに大忙し。
部長は娘さんの『運動会のかけっこ一等賞お祝い』だそうで上がり。
そして私は軽く書類をトントンと揃えながら
タイミングを計り、一之瀬の一挙一動を観察していた。
せめても一緒に帰りたい・・。
何故か今日一日中微妙に機嫌が悪い一之瀬。
何かあったのかな、後で聞いてみようとと考えつつもチラ見を続ける。
「帰るか・・」
呟く一之瀬、チャンスと席を立つ私に思わぬ障害物。
「誰か傘余分に持ってないか?」
部長の困り果てた声が聞こえた。
私はどうしようかと考えた後部長に声をかけた。
「部長、私折り畳みもってるので・・どうぞ」
部長の為というか、娘さんの為。
小さい頃、お父さんの帰りを玄関で待ってた思い出が蘇った。
きっとその子も、父の帰りを首を長くして待ってるんだろう。
「あ、部長。俺の使ってください」
「一之瀬?」
「いや、悪い!この前お前の傘無断で借りて・・家に置いたまんまだ」
「へぁ?」
勿論、私のは口からのでまかせ。
折り畳み傘なんて会社に置いて置くほどきっちりした性格でもない。
「一之瀬は・・どうするんだ、アテはあるのか?」
「なきゃ言わないですよ、ほら部長、娘さんが首長くして待ってますよ」
「悪いな一之瀬、じゃぁ明日返すから・・」
部長は笑顔で出て行った。
「いちの」
「いっちのっせせんっぱぁーい」
語尾にハートマークを付けて。
新入社員のユカちゃんがすっ飛んできた。
お蔭で私は気おされて、とりあえず蚊帳の外。
「ん、どうした」
「ユカと一緒に帰りましょうよぉー、相合傘して」
「へ?」
「傘ないんでしょぉー?」
ユカちゃんは持ち前の甘え声で迫る。
一之瀬もあーゆータイプに弱そうだ。
そう、ふと思うと少しブルー・・
あんなのかぁ、そう見ながらも勝算無しと敗者は退散。
二つ目の障害物を目に、さすがに恋の神様はもう助けてくれないと悟る。
何二十七にもなって、中学生みたいな純情引きずってんだろ、私。
そして傘を手に取りドアを開けた。
「天宮、今日傘返したいから傘入れてってくれ」
一之瀬から声がかかる。
「駐車場までの五分間だけ!いいだろ?
ついでに家まで送ってやるからさ」
拒むわけ無いじゃない。
ちらりと見るとユカちゃんはピンクの傘を握り締めて。
私を一瞥すると脇を通り抜けて帰ってしまった。
・・・なにやら難しい。
「電気消すよー」
「おー、他は電源切ってきた」
「はいはーい」
電気を消して、鍵をかけて駐車場へ向かう。
大きい傘でよかったと思った。
結構それたけど、恋の女神様は微笑んでくださったようで。
それよりも。
さっきの嘘の意味が聞きたい。
何でわざわざ部長に嘘ついたの?
なんでユカちゃんにも嘘をついた?
もしかして、と想像は良くも悪くも突っ走る。
「ね、一之瀬・・何で部長とユカちゃんに嘘・・」
「何ででしょーう?」
「いぢわる・・教えてよ」
そういいながらも傘を開く。
バサッ、と音がして、傘が勢いよく開く。
「結構降ってんな」
歩きだす一之瀬、濡れる肩。
幾ら大きめの傘って言っても、二人は無理がある。
「うん・・・あ、濡れちゃうよ」
相槌を打ちながら歩き出すと、彼の肩が紺から濃紺へ。
ぐっしょりと濡れた肩を気にする素振りもせず、彼は歩く。
私が声をかけても、
「構わねぇよ、お前のだろ」
と、こんな具合だ。
こういうのを考えてた訳じゃないのに。
一之瀬に風邪なんか引かれたら本末転倒。
「やだ、風邪引いたらどうすんの?もう・・・」
一之瀬を軽く静止させ、慌てて取り出したハンカチで軽く押さえる。
ピタリと体に張り付く不快感を露にして、一之瀬は何かを呟いた。
・・・冷たいとか、その程度のものだろう。
聞き逃しても大丈夫だと認識した私は、一之瀬の肩をまだ抑えていた。
「眞姫」
「なに?」
夏用の背広を下ろしたばかりのようで。
水を急いで拭き終えた私は、また彼の左へ戻った。
「・・・・聞こえたか」
「え、何が?」
「・・・・じゃ、いい」
「何よぅ・・・・気になるじゃない」
二人でぴたりと寄り添う。
そこで、私は違和感を感じた・・・いつもする煙草の匂いがしないのだ。
彼の背広どころか、彼の全てから。
占いなんて気にしている自分がバカらしい、と密かに一之瀬は呟く。
『今まで言えなかった事を打ち明けると、きっと願いは叶います』
入社してから五年分のやりきれない、溜まりに溜まった感情。
「今更・・」
諦めてしまいそうな自分を奮い立たせる。
きっと、あのキャスターさんは嘘を吐かないはずだ。
専属占い師とか言う、マリアンヌさんとやらも信憑性が高そうだ。
・・・・名前的に。
「眞姫・・・」
「だから、何?」
まだまだ、時間は七時間弱もあるじゃないか。
今日が、終わるまで。
梅雨空を見上げながら、
何となくあの空にも似た自分の性格を知ってか。
一之瀬は、きっとギリギリまで何もいえないであろう自分を想定していた。
end...?
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問)一之瀬君は何が言いたかったんでしょうか。
Aす・・・好きだ!!
B実は俺、お前の・・・DVDパクったまんまだ。
C五年前に貸した天丼代800円、返してくれ。
D・・・・言わなくてもわかんだろ?
取り合えずCは大穴で(は
多分、職場で寿さんが多いからでせう。
一之瀬君、ドッキドキ。
いつ眞姫ちゃんが他の男に取られるか。
イメージ的には野江君との三角関ケ・・ごふぁっ!!
問二)何で一之瀬君はイライラしてたのでしょう。
A「仕事で失敗したんだよ・・」
B「男にゃいろいろあんだよ・・」
C「梅雨だろ?ジメジメしてんの嫌いなんだよ」
D「天宮が煙草苦手だから・・禁煙してんだよ」
Dだったら素敵ですよね。
Bは・・・察してください(何
最後まで名前ちゃんと出てこなかったなぁ・・
一之瀬、野江、あと美紗は苗字が無かったです。
イメージでは野江耕輔(コウスケ)でした。
いや、今思いついたんだけどね?
・・・・難しかったです、オトナの世界わ・・。
学生が一番書きやすいなぁ・・・
そう、好きな子にはちょっかいだしたくなる
ピーチクパーチク話が一番好きですよ。
書きやすいんだもん・・・(涙
もしかしたら続編をそのうちフラッとかくやも知れませぬ。
雨の季節、来ましたねぇー・・・
丁度「今会いにいきます」やりはじめましたよね。
ミムラ可愛い・・・成宮さんのちょっとダメっぽいトコもいいと思いまふ。
たくみさんはドジっ子☆なんだから(ハァ?
(んで、上のあとがき書いてからしばらくが経ちました。)
吃驚だよ。
だって題名が変なのだったし・・・
「rainbow blue」とか書いてあったよ!?
なんだよレインボーブルーって・・・・
青い虹?それとも虹の(中の)青(色)ってこと?
それともブルーハワイの仲間か(モチツケ
で、今のになりました。
そのまんまって言えばそのまんま。
つーか題名長ェ。
constellation=星座
count down TV=こういう歌の番組ありますよね。
「今日の占ぁーい『カウントダーゥン』」とかいうトコからきたっぽいです。