「あー、ずりーぞ」 「貰ったもの勝ちだっつってんだろボケェ!!」 ああ、今日も平和です。 俺とアイツとあのコ 鳴北一樹、読みはナリキタカズキ。 年齢十五歳・・訂正。本日午前四時二十七分にて十六歳。 家族構成は両親、数分違いの弟一人。 一卵性の双子っていうモノらしく、外見は瓜二つだ。 ・・・学校なんかでは良く間違えられる。 間違えないのといえば、両親と、俺ら兄弟自身。 それから、俺が生まれた病院の婦長をしていた、養護の煤崎先生。 残りはただ一人。 それは・・・・ 「一樹君、誕生日おめでとう!!」 「あ、南野」 受け取るものは殆どがチョコレート。 男友達でさえもふざけてチョコレートだ。 朝から疲れた俺、笑顔の、麗しのクラスメイトが隣に。 勿論、疲れだろうが何だろうが吹き飛ぶ。 俺と愚弟を間違えない唯一の同年代の女の子。 南野、咲花。 南野咲花、読みはミナミノサキカ。 年齢は十六歳。 誕生日は四月一日、おひつじ座。 家族構成は両親、母方の祖父母、一人っ子。 「咲花ぁ!チョコちょーだい」 「双葉君も、誕生日おめでとう」 行き成り影から現れたのは俺の愚弟。 鳴北双葉、読みはナリキタフタバ。 俺と生まれた時間が一分違いの弟。 性格はそんなに似ていない、と少なくても俺は感じている。 「「も」って何だよォォ」 「俺の方が先に会ったんだからしょうがないだろ」 「・・・・ハァ(盛大な溜息)」 「ご、ごめん双葉君・・・誕生日おめでとう」 そう、こいつも咲花にはめっぽう弱いのだ。 笑顔で言われたらハイ以外いえなくなる。 惚れた弱みというもの。 双子といえば、確かに趣味は似ていた。 細部を見れば正反対だが、根本は似ていた。 例えば、俺は写真が好きで、双葉は絵が好きだ。 俺が油絵どうこう言っていると、弟は蛇腹のついたカメラが良いと言う。 まさか、好きになるタイプまで一緒とは、思わなかった。 だから、くだらないことでも大騒ぎしてしまうのだ。 「あ、とりあえずチョコクッキー焼いてきたんだけど・・」 「食べるッ!!」 「頂くよ」 「どうぞどうぞ、召し上がれ」 可愛い布から出てきたのは、これまたまん丸のクッキー。 匂いと、いい感じに表面に出てきたチョコチップが美味しそう。 どんなのでも、まあ咲花のモノなら何でも食べるけど。 ・・・最後の、一個になった。 (兄貴・・・少しは弟を可愛がれよ) (うるせぇ愚弟が) (愚弟でもいーから、これを・・これを食わせろ) (兄貴に譲れよ) (誰が兄貴だボケェ) とまぁ、こうなるのは必然で。 「食べないんなら食べちゃうよ」 ぱくり。 と、こうなるのも当然で。 全く気づかない咲花は筋金入りの鈍感娘である。 ある意味で、尊敬に値すると俺は踏んでいる。 「で、クッキーはついでで・・。 本当はケーキ焼いてきたの」 咲花の笑顔。 勿論、俺もアイツも笑顔になったのは言うまでもないだろう。 俺は頬を綻ばせ、アイツはニタリと笑う。 「南野、ありが」 「咲花ァァ!!」 俺は笑顔で受け取り、アイツは笑顔で抱きついた。 「・・・オイコラ」 「何だよ兄貴」 「何してんだよ変態」 「ムッツリよりかはオープンの時代だぜ」 「一辺逝ってこい」 「どうしたの、一樹君・・と双葉君」 「「何でもないよ(ぜ)!!」」 双子は、こういうところだけリンクする。 奇妙な組み合わせというか、巡り合わせと言うか。 とにかく、俺は普段の弟は好きだ。 南野が絡まなければ、双葉はいいやつだと思う。 俺だって愚弟如きに負けるわけにいかない。 兄として、いや男として。 真っ白なホイップクリーム 真っ赤で光沢のあるイチゴ 中央には「お誕生日おめでとう」のチョコ板 「チョコの板は最後まで・・・ってェェオォイ!!」 双葉が目ざとく見つけたのはチョコプレートの文字。 確かに、お誕生日おめでとう、は書いてある。 問題はその下。 TOかずきくん ・・・・双葉のふの字も書いてない。 「はっ、長男が一番偉いんだよ(違) 戦時下だって長男は兵役にとられないだろ」 「あ、あのね・・」 咲花が何かを言おうとするが。 一旦熱くなった男は止められない。止まらない。 「咲花は渡さないっつってんだろこの尻軽男」 「男は尻軽って言わねーんだよボケェ!!」 「ちょっ、一樹君、双葉く・・」 段々と白熱化する会話。 「へっへーんだ!俺これ食っちまうもんね!!」 チョコプレートを一口で頬張る双葉。 「あ、俺の」 「いつ兄貴のって決まったんだよ」 「俺の名前が書いてあったからだろ」 咲花はタイミングを測っていた。 きっと訪れないだろう会話の区切りを狙って。 その、桜花のイメージは当たっている訳で。 「半分コだかんな」 「いや、お前チョコ食ったから五分の二だろ」 「イチゴは弟優先だって理論があんだよ」 「知らないねそんな理論。 お前が先に手出したんだから三分の一でいーだろ」 「何だその理屈。俺知らねーヨ。 ちなみにちゃんとイチゴはグラム測れよゴラァ」 「煩ェよ、このニワトリ頭が」 「何だそれ、髪型か?」 「バァカ、三歩歩いたら忘れるって事だよ」 「俺一歩も動いてねーし!!バカ兄貴!」 「はぁ?大体お前は・・」 熱戦となる、名物双子マシンガントーク。 そこへ、そのマシンガンを持ってさえも勝てない最強の・・・ 「ヒトの話を聞けってんだバカ双子!!」 最強の少女が現れた。 即座に静まる二人。 ・・・・・。 「返事ァ無ェのか?」 「すいません」「ごめんなさい」 「最初ッからそーやって聞けっての! いーい?言うわよ?ケーキは同じのが二つあるの」 ・・・・・? 「もーバカね・・つまり、一樹君・双葉君それぞれにあったの」 ・・・・・・。 ・・・・・・・・・!! 「俺はバカじゃ無「だって兄貴がァ」 「・・・・・ァん?」 「「・・・申し訳ございませんでした」」 「んん、宜しい☆じゃぁ双葉君の分のケーキ・・」 「待て、裁判長(挙手)」 「はい、鳴北一樹君」 「この被害は勿論訴えていいって事ですか」 「許可します」 「・・・・双葉」 「・・・・先ほど帰りましたわ検事さん」 「・・追うぞ南野警部」 「よしついてこい鳴北巡査部長」 俺とアイツとあのコ。 俺はあのコを見ていて アイツもあのコを見ている。 ・・・・あのコはドッチを見てるんだ? 俺か、それともアイツか・・・・・ 「アヤコー・・五組の林崎君格好良くない?」 「え、倍率高いって」 「でも昨日、今度遊びにいこーって」 「え、マジ?もしかして六組の・・」 「んーん・・二人でだって・・・ あーもう、恋ですかこれわー」 俺はバカでした。 ・・・・三番目の選択肢を忘れていた。 「ってことで、双葉副委員長」 「何だ一樹副委員長」 結局、どっちが委員長だと言い争った挙句二人とも副委員長に。 学級委員じゃない。 題して(題さなくても別にいいんだが 『南野咲花の恋、応援しつつ破壊し隊!!』 隊だったら隊長だと思うのだが、そこは愚鈍なもので許してくれ。 「早速呼び出してみたいと思う」 「ああ、本当に咲花を幸せにできるかどうかだな!!」 「俺たちの手で、咲花の幸せは守る!!!!」 「時に、林崎とやら」 林崎は腰パンな上に髪の毛もニワトリヘッドだ。 髪型もピヨってるし、脳内もピヨってそうだ。 何だ、これがちょい悪オヤジならぬ何とやらってやつか? 「お、一組の鳴北兄弟じゃねぇか」 「うっせーよお前黙っとけこの腐れ」 「よせ、双葉・・」 血の気が多い弟、双葉。 もう林崎は敵にしか見えない。 敵=腹立たしい≒抹殺≒一掃=林崎 とまあ、こんな具合で式が成り立っている。 それを止めるは兄の一樹。 「何で止めるんだよ! こんな腐れ・・(ピーーッ)野郎の事なんざ」 「放送コードに引っ掛かるだろ」 「それはコイツが・・(ピー)・・なクセに偉そ「林崎!」」 「お前は南野咲花を幸せに出来るのか?」 「出来るのか?」 エコーみたいで漫才みたいだろ。 といえば、それはそれで漫才っぽくなるので止めておいた。 一樹は双葉の存在を九割七分は無視しつつ話を続ける。 「南野・・ああ、咲花?」 (この野郎・・・呼び捨てにしやがって) 「純情そーだし、向こうが俺の事好きらしーから」 「この(ピー)野郎が・・・・」 「あ、別にいらねーし、お前らにやるよ」 「そんなの咲花呼んでるって俺が言ってから言えコラァ」 「・・・双葉、お前・・・・(今更だけど)馬鹿」 「何だよその間わ・・・さ、咲花!?」 最悪だ。 林崎は林崎で、修羅場はガラじゃねーって逃げるし。 南野は南野でさめざめと泣いてるし。 (何で呼んでんだよ) (だって、咲花がどーしても聞きたいって) (限度があるだろボケェ) (咲花どーすんだよ) (こういうときは兄の俺がだなァ) 「関係あるか!!常に弟のほうがデキてだな・・ 兄貴は腑抜けで、弟が死んでから頑張って甲子園行くんだよ!!」 「それはタッチだろ?だったら兄貴の方がセンスあるじゃねーか! けっきょくヒロインだって、たっちゃんとくっつくんだよ」 「ちが・・そ、それは・・・・」 「ホラみろ、言い返せねーだろ」 「能書き垂れる奴は大概にして大成しねーんだよ! 俺がもし交通事故にでも遭ってみろ、兄貴訴えるからな」 「意味わかんねェー」 「ふふっ・・・」 「さ、咲花・・頭でも打ったのか?」 「双葉、言葉を選」 「二人とも、あたしに気ぃ使ってくれてるんでしょ?」 「違「気にすんなよ、咲花!何たってオ・・」」 「俺は南野好きだから!」 「うん、あたしもダイスキだよ・・」 神様はいると、俺は確信した。 ほらみろ、双葉の悔しそうな顔を。 ああ、今世界の風は俺が全て生み出してる。 そして神風は俺に吹いてるんだ・・・・ 「二人とも、掛け替えの無い友達だもん」 俺とアイツとあのコの距離。 ・・・・縮まる気配は、無い。 たとえ乙女の日というイベントをもってしても。 ・・・・決戦はまだ火蓋さえも切って落とされていないのだ。 ・・・嗚呼、神様。 どうか俺に幸せを下さい。 アイツはどうでもいいです。 どうか俺に・・・・ 「一樹君、ちょっと話したいことがあるの・・」 頬染めて、校舎裏に呼ばれた俺。 髪の存在を確信した。 ああ、神はいる。 そして美の女神アフロディーテは俺に笑いかけているんだ・・!! 屈折十六年、やっと、やっと・・・・ 「ねぇ、七組の鈴木君良くない?」 end ************** 雪乃様のキリリク作品でつ☆ リクエストは「ギャグ」とのコトだったんですが・・ よろしかったですかね・・・(汗 書いてて楽しかったんですが。 ・・・・いつもの笑顔で流してやってください。 ちなみに、名前は悩んだので結局植物という手にでました。 もうお気づきですかネ・・・ 一樹・・木。樹木の「樹」 双葉・・葉。更に言えば植物の第二段階双葉。 咲花・・花。しかも花が咲くってトコから。 林崎・・林。木がいっぱいあるところ。 鈴木・・木。そんだけ。 ・・・ちなみに、一樹は長男なので「一」が入ってます。 なかなか二と植物が思い浮かばなかったので双葉に。 苦しいですが、双葉の「双」は「二」ってコトで・・・ 雪乃様に限り、似るなり焼くなりどうぞ☆ミ