あの幼稚園児、あたしの出身園だった。
汚い汚いって見てたあたしも、同類だって気づいたのはついさっき。
「にとなー」
「なーに」
「・・・俺とにとなの関係って、何」
「・・・・・・・」
・・・正直、言葉にならなかった。
言葉に詰まった。
「どーしたのアオちん、真面目ちゃんじゃん」
「・・・・」
どーやら茶化すのもキかないらしい。
いつもなら「そーだよねーアハハ」で済ますアオ。
ふざけたあたしに真剣な眼差しが突き刺さる。
注がれる視線に視線で返す。
初めてみるかもしれない、こんな真剣な表情。
ずっとそらせなかったけど、咳き込むフリして目を逸らした。
「あっえ・・・と」
「・・・・・・・」
ずっと答えを出さないように遠回りしてたのに。
いきなり突きつけられた鋭い刃に、体も心もすくんだ。
臆病者だから答えが出ないように逃げてたんだ。
全てを曖昧にして、霧の中に、闇の中に必死に隠してた。
後々考えれば、もっとこの時上手くやれたんだろうけど、あたしは。
必死で繋ぎとめたくて、頭をフル回転させた。
「・・・・・えと・・・・」
「にとなが言えないんなら選択肢をあげるよ」
アオはとても冷静で、真剣だった。
「イチ、友達」
「ニ、恋人」
コイビトの言葉に体が強張る。
自分でも自分が、ワカラナイ。
「サン」
あたしは意外と冷静に、最後の選択肢を聞こうとしていた。
ニンゲンってものは、案外適応能力はあるらしい。
そんなあたしの甘っちょろい考えは、砕かれる。
「サン番目、玩具」
あたしはただ、アオの次の言葉を待つしかなかった。
「俺は、にとなのこと本気だから」
あたしはあのビスコちゃんよりタチが悪い。
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