そう、簡単に言ってみれば。

世界はスベテ二択で考えてみればいいんだ。













Which?



















「なーんでこうも上手くいかないのかね」
 眩しいほどの緑色の芝生。
その中に埋もれつつあるレスは、ぼそりと呟いた。
「・・・・・何が」
 その隣で読書していたロティは、しょうがなく聞いてやった。
なぜなら、レスがこれに似た様なセリフを言うのは五回目だからだ。

「この世の中の全てが」

 ロティは、いきなり変な事を言い出したレスを見た。
彼はおどけている様には見えない。顔は至って真面目だ。
目が空から、ロティに移される。
「・・・」
「フツーそこはどうしたんだって聞くんじゃない?」
「それを望んでいるのか、僕に」
「あー無理だろーね。分かってるよ」
「じゃぁ言うな」
「・・・」
 レスはロティから目を逸らし、また空を見つめた。
真っ青な空はただ、今日も世界が続いていることを示すように広がっている。


「例えば」
 ロティは、本から目を恋人に移した。
視線に気づいてか、レスもロティをみやる。
しかし、むくれているのか直ぐに顔を空へ戻してしまう。
「・・・何」
「だから、例えだ。何が上手く行ってないんだ?」
「・・・セカイヘイワ」
「嘘吐け」
「あはは、でも世界平和ってうまくいってねーぇじゃん」
 レスは笑って誤魔化して。
そして立ち上がった。
「さぁー帰るか」
「・・・帰るのか?」
「他に何があんだよ。さーっさと宿戻」
「・・・・・・」
「・・何・・・だよ・・」
「いや、すまない」
 立ち上がると、背中に暖かい体温を感じる。
ああ、抱きしめられたと感じていて。
でもどこか気恥ずかしくて、照れ隠しに「何だよ」と問えば。


すまないって何だお前


普通そこは、何となく甘いセリフを吐く所だろ。
恋人と久々に二人っきりで。
抱きしめられたら、甘い期待を持ってしまうのはしょうがない。
だって、女の子だもん(は
なのに、なんで謝ってんだよ。
しかも、何で直ぐ離すんだよ。

この、「上手くいかない」元凶め。






 宿屋の一室。
二人部屋だったため、男女・・・で別れることになった。
部屋には、レスとモリナ。
まあ、モリナが「女になんか興味ないわよ・・ね、シーズ?」
と笑顔で詰め寄った為、ロティとシーズは三人で寝なくて良かったわけだ。
というよりも。
一応女として見ざるを得ないモリナの
入浴シーンだの着替えシーンを見るのは身体に悪かったわけだ。
ロティもシーズも、生物学分類上は男なのだから。

「はぁー・・」
 レスは机のテーブルに突っ伏して、モリナは化粧台の前。
ポーズをとったり、服を合わせているモリナは至極楽しそうで。
溜息を吐いたり、立ち上がろうとしてまた座ったり。
そんなことばっかりしているレスは至極落ち込んでいて。
そんな調子が何時間か続いている。
「何溜息なんてついてんの、レス。何か悩み事でもあんの?」
 さしずめ、ロティの事でしょうけど、とモリナ。
思っていても、口に出さないところがいい所・・かもしれない。
「モリナ・・・」
「そんなに、夕飯が気になるの?好き嫌いあった?」
「・・・・・」
「冗談だって分かりなさいよ・・ロティと上手くいってないんでしょ?」
 ロティ、の単語にびくりと動くレス。
分かりやすいとクスリと笑えば、いつもは反論するレスが大人しい。
どうやら、結構な悩みなようで。
「あいつ、本当に・・・・好きなのかな」
「何を・・誰を?」
「・・・・・・」
「レスを?」
「・・・・・(こくり)」
 耳まで赤くして、頷く姿が愛らしい。
はたから見れば、どんだけイチャこいてんだよとツッコミ可能な二人だが。
いくら外面上はそうでも、本人は悩みを抱えているものらしい。
「何でそー思ったのよ」
「だって・・二人っきりでも普段と変わらない・・っつーか」

 変わって欲しいのか。

 いや、レスは野獣の如くロティに襲って欲しいってことかしら。
そんなフジョシ的な思考を中断させ、モリナは何とかレスを見る。
横を向いて、赤らめた顔を右手で軽く抑えながら呟く。
なんだオンナノコオンナノコしやがって(止まって
「・・・・そんで?」
 一言だけ、短く問えば。
「で、ロティは多分、もっと年上の理知的美人が好きだろうなって考えたら・・・」
 居もしない、浮気相手を想像上で作り上げてヤキモチを妬く。
ようするに、今のレスはその状態である。
何を言ったとしても、不安を拭うことはモリナには出来ない。
出来るとすれば、元凶のみだけだろう。
「本人に聞かなきゃわかんないでしょーが」
 モリナは溜息を吐きつつ、イスを思いっきり蹴ってレスを立たせた。
「いって・・何すんだよ」
「ムードメーカーが静かだと盛り上がんないのよね。
さっさと解決して来なさいよ」
「でも・・」
「行って来い」(ギラリ
「っはい!!」(ビクッ



「てゆーか、あんたらがギクシャクしてたら・・
あたしとシーズだって何も出来ないじゃない・・・
折角、二部屋あるんだから有効活用しなきゃもったいないわ」



モリナは、レスが今晩部屋に戻ってこないことを知っていた。

そして、宿屋の傍にある図書館にいるであろうシーズを迎えに行くために
化粧台のガラスにウインクをして、部屋から出て行った。

「シーズ・・今夜待ってなさいよっ☆」











 部屋の前でうろうろする乙女、ひとり。
手をドアの前まで持ってきて、叩こうとするが戻す。
そしてまた、ドアの前をうろうろとする。
決心が、叩こうとした瞬間揺らぎ、そしてまた決心を固める。
レスは窓から見える、赤みがかった空を見て、溜息をついた。
そして今度は、喉がカラカラになる。
何度かむせるように咳をして、ドアノブに手を掛けようとして・・・

ガチャ・・バゴン!!(クリーンヒット☆


「っつー・・」
「人の部屋の前で何をしてたんだ」
「・・・・いたい」
「・・・・?」
(分からず屋め)
「・・・い、た、い!!」
 レスは目を見開く。
ロティに、間接的に部屋に入れろと迫る。
「・・・・・・入るか?」
 やっと気づいたロティが、溜息交じりに部屋へと招く。

「いいの?」
「悪いことは無い。シーズも何処かに行ったみたいだし・・」
「シツレイシマス」

部屋に入ると、ベッドサイドに座り皺が付いている。
そしてシンプルなデザインの眼鏡と、分厚い本。
何語で書いてあるのかは分からないが、小さい文字が這っている。

「何か飲むか?」
 ロティは簡易キッチンでカチャカチャやりながら声をかけた。
レスは、さっきまでロティが座っていたであろう場所に腰を下ろす。
うっすらと、のこる温もりがレスの心を落ち着かせた。
「んー、何か飲みたい」
 ロティの眼鏡をかけてみる。
頭の奥に鈍い感覚がして、倒れこむ。
新たな皺が刻まれた。
「有るのは、コーヒー・紅茶・ココア・ミルク」
「んーとねー・・・」
 コップにお湯が注がれて、湯気が立つのが薄っすら見えた。
ぼやけた視界に、動く何かが迫ってくる。
「あ、ごめん。ココア飲みた・・・っん」
 てっきり、自分の飲み物オーダーが遅かったから
わざわざロティが聞きに来てくれたのだと思っていた。
だから、突然眼鏡を取られたのに気をとられ、気づかなかった。
キス、されてたことに。

背中はシーツ、目の前にはロティ。
逃れられずに、大人しくしているとまもなく唇は離れた。

「・・・あれ、ここ・・あ?」
 唇に残る微かな温度。
そして、微かな甘みが唇に残る。
「味見しなきゃ人に飲ませられないだろうが」
「・・・なんで」
「いや、今日は少し冷えるからな。
それにお前はコーヒーが飲めん。紅茶は好まない。
ホットミルクとは二択だったが・・・甘い方が好きだろう?」
「・・・・」
 ああ、何でここまで見抜かれているんだろう。
何で、いつも先を行かれてしまうんだろう。
さっきだって、「なんでココアって言う前にもう用意できてたの」って。
言う途中、「なんで」だけで答えは返ってきちゃうし。

いつも、いつもロティは余裕があって、冷静で。
こっちはいつも、ロティの事で頭がいっぱいいっぱい。
何処を見てるの、何を見てるの、何を考えてるの、誰を・・
貴方の視線の先、思考の向かう先、全てを知りたい。

束縛だとか、独占だとか言われても構わない。

理由は簡単、好きだから。


「ロティ・・・卑怯だよ」
「卑怯・・・僕がか?」
「ロティはあんたしかいないでしょーが」
 ベッドに寝転がり、足は宙ぶらりん。
座った体制のまま上半身だけ寝させたから、まあ当然の格好だけど。

目を合わせるのも、なんだか気恥ずかしくて。
照れ隠しに、眉間に皺を寄せて左を向いた。
目にうつるのは、ロティの腕。

細い自分の腕とは全然違う、性別の差を急に感じた。

「何でだ」
「何でいつも先に行っちゃうの」
「へ?」
「いつも余裕持ってて、紳士で良い人で」
「・・おい、レス」
「格好良くて、皆に優しくて、平等で・・・」
「レス」
暖かいものが頬を伝った。
「最悪で・・・卑怯で・・・・」
「・・・・」
「自分だけが好きなんじゃないかって思わせて・・」
途中から、可愛らしくもない鼻声になって
涙腺は緩みっぱなし。
涙はとめどなく流れて居て。
もっと、オトナの女性だったら、綺麗な真珠みたいな涙を流すんだろうけど。
コドモっぽい独占欲丸出し中としては、そんな涙は流せない。

「そりゃぁ、ボンキュッボンな身体もしてないし
理知的でも、大人しくもないし、いいとこなんて全然ないけど・・
ひとりぼっちじゃ嫌だよ・・そんなロティいらないぃ・・・」

「・・・レス・・の」
ロティは優しく額に口付ける。
「バカ」
「へ?」
間抜けな声を出したとたん、軽く頭突きをデコに喰らう。
「バカ・・・いや、それ以上のバカだなお前は」
「な、何が!」
「・・・お前の行動を先読みできるのは、それだけお前を見ているから。
余裕も、紳士的な態度も、皆への態度もすべて自分を抑制するためだ」
「・・・・?」
「レスと二人になると、どうもおさえがきかなくなる」
「・・・・・・え、ロテ」
「好きだ、言わなくても分かってくれ・・」
今度はロティが顔を逸らす番だ。
耳まで真っ赤にして、そっぽを向いている。
「ロティ・・」
今までの不安が全て嘘のように消えた。
もう、闇も何もありゃぁしない。
ほんのりと暖かい、例えるなら淡いピンクかオレンジの感触。
胸の奥にほわっと広がっていく。

「でも、その我慢も今日までみたいだな」(ニヤリ
「へっ?」
「お前は、我慢していた僕をいらないと言った。
つまり。僕は今日から何の遠慮もいらないわけだ」
「・・・・ちょっと、ちょ、タンマタンマ!」
「・・・何だ」
すっかり臨戦態勢(笑)のロティに、身を捩ることで待ったをかける。
なんとかはいずり出て、上半身だけ起こすと四つんばいのロティが目の前に。
あの、ロティの身体とベッドの間に居たと思うと恥ずかしくなる。

「あの、ね?言い過ぎたというかなんと言うか」
「待てない」
「ぅ、んっ・・・ひゃ!?」
ただの口付けが、どんどんと深くなる。
と、同時にあの大きな手が自分の胸部へと向かう。
「ぁ、やだ・・・ゃあ・・・・ん?」
手を顔の前に持ってきて、なんとか抵抗。
やだ、と声に出して言えば、すぐにロティは手をどけて。

「お前はいつも、ぐちゃぐちゃと色んな事を考えすぎだ。
二択にすればいい。僕の事を好きか嫌いか・・どっちなんだ?」
「へ・・・?」
「そっちから誘ったんだ。覚悟は出来ているだろう?」
「えーーーー!!?」
「嫌よ嫌よも好きのうち、というだろ・・。
それにお前の言う抵抗は抵抗じゃない。ただ僕を煽っているだけだ」
「・・・じゃぁこっちにも条件がある」
「?」
「ね、すっごく愛してるか、すっごく嫌いかどっち?」
「・・・言わせる気か?」
「どっちなの?」
「・・・・」










翌朝。

「あら」
「・・・」
ばったり、とはこのこと。
ドアから出てきたのはロティとモリナ。
ロティは、ロティとシーズの部屋だったところから。
モリナは、モリナとレスの部屋だったところから。
「ロティ、あんた見直したわ」
「はっ?」
「もう、赤くなっちゃったわよこっちまで!」
けたけたと笑うモリナに、頬を赤らめるロティ。
そこへ、モリナに続いてシーズが出てくる。
「あら、シーズおはよう」
「おっ・・・おはよ・・う」
モリナを見た瞬間真っ赤になるシーズだった。
しかし、ロティを見た瞬間もっと赤くなってしまった。
「シー・・ズ?」
恐る恐る尋ねるロティをよそに、シーズは茹蛸だ。
「ま、あんなん聞かされたらね。でも負けてなかったわよ、ね?」
話を振られたシーズは部屋の中に逆戻りだ。
その背を見送りながら、ロティはますます困惑した。
「レスは」
「寝ているが」
「今の状態じゃないわよ。起きれ・・立てんの?」
「・・・保障できない」(さらり
(あーんもうこの男は・・・)
「早くレスのトコに帰ってあげなさいよ」
「ああ、分かった」
「でも、本当に見ものだったわー・・。
『すっごく愛してるか、すっごく嫌いかどっち?』
ですって・・・んふふ、朝食の場が楽しみだわ♪」
「ちょ・・」
振り返ると、既にモリナは消えていた。
まもなく、隣の部屋から
「シーズぅv」「うわぁぁッ」という声が聞こえた・・気がしたロティだった。



どっち、なんて聞かなくても、選択肢は最初から一つしかないのに。


ロティは再びベッドに入り、愛しい恋人ぎゅっと抱きしめた。








end.




*****************
ごめんなさい。
それしかいえません。
誕生日の約一ヵ月後ですよね?
あはははははは(壊

リクは・・・ロティレス・甘々・15禁まで(コラ)
でしたよね・・・
どうですかね(キクナ
とりあえず、最後のモリナとの絡みで最後のは達しているような・・
しかも、モリシズいれてもいいっていうから(責任転嫁かゴルァ

・・・もらってやってください。切実です。