皆さんはご存知だろうか。
子供は、時にはとても残酷な事を発案する。
そして、本当に実行し、また実行させてしまう。

稚拙な響きながらも、絶大な効果を持つそれは・・

全てがモリナの一言から始まった。














game o.v.e.r.





















「だから、何で僕が・・・」

ロティは面倒臭そうに言うと、持っている本に栞を挟んだ。
ハードカバーのこの世に1点もの。
大変珍しいという書物を、図書館で譲り受けたらしい。

実は、博識を誇る年配の館長を言い負かせたためであり、
賭けの対象となったのは、お互いの秘蔵の書であった。

口から泡を飛ばしながらいきり立つ老人。
ハードカバーの魔術書を読みながら、淡々と言い放つ青年。

この二人の戦いは三日で決着がついた。
結果は、言うまでもない。
今ロティが読んでいる本が賭けの対象物なのだから。
つまりは、勝ったのである。
後々に知れたことだが、老人はこの地では有名な魔術師だったらしい。
若い頃の自分に似ていると上機嫌で、その他十冊も譲り受けた。
普通の本なわけもなく・・・タウンページ三冊分が、一冊分だ。

「頭オカシくなるわよ」

「モリナには敵わな」

「あっちむいてホイッ!!」

右を指差したモリナと、右を向いたロティ。
ロティはこほん、とわざとらしく咳をしてから向き直った。
目の前には、強敵モリナ。
しかも満面の笑みである。

「モ」

「敗者は何も言う権利なし」

「うぐっ・・・」

「そもそもロティが「あっちむいてホイ」弱いからよ」

モリナはずずい、とテーブルに身を乗り出した。
対するロティは理由に興味を失ったと見える。
また先程のように、何事もなかった様に本を読み始めた。

テーブルに対面で座っていたモリナはさらに身を乗り出した。
ロティはイスごとすすっと避け、相変わらず読み耽っている。

成る程、とたまに納得を挟みながら、頭を過ぎる文字の羅列。
目が開けっ放しで乾いたときは、ゆっくり閉じて。
1、2回呼吸をしたら開ける。
そして足を組み替え、テーブルのコーヒーを一口・・

「・・・・・・」

「・・・・ああ、その理由は認めよう」

モリナはそれを聞き遂げると、コーヒーを元の場所へ返した。

「で、僕は何をすればいいんだ?」

「んふー・・・レスと公開プレ」

「却下」

「・・・・・・・・えー?じゃぁー・・・」

当たり前だろう。
あえて何を口にしようとしたのは無視しておくとして。

こんな要注意人物な上に至上最強最悪・・げふん!!!
女は他にいないだろうというか知りたくもないし、遭いたくも無い。
いや、漢字の変換は合っている。
「会う」ではなく、「遭う」だ。
そうそう、事故に遭う、の「遭う」だな。

そもそも、ビンゴブックでもあったら一番上に載せたい。
この、男の目線でも女の目線でも。
そういう攻め口は・・やめてくれ(((汗

な、何を言う気だ・・・?



「レスに口説き文句を吐く!!」




これが小一時間前の会話。
元来真面目な性格ゆえ、やらねばならぬと決意はした。

・・・というより、あのモリナは誤魔化せない。

「何を言えと・・」

好きだ、すら滅多に言わない。
愛してる、なんて殆ど言わない。
甘い言葉?口説き文句?冗談じゃない。

大体「柄にもないコト」なんでできるものか・・。
・・・やらなきゃいけないんだよな、絶対。

「罰ゲームなんて・・僕は今までした事ないぞ?」

そもそも人生負けたことなんて・・。
なんて・・・・・

いやすみません、僕が悪かったんですきっと。

そうやって、安直にギブアップしそうになる自分をとどめる。
















「ねぇ、おじさまぁ」

「なんだいモリナちゃん」

・・・。

オイオイオイオイオイオイ!!!
騙されてるってオッチャン。

「最近魔物が出るってホント〜?」

「ああ、本当だよ。
だからモリナちゃんみたいな可愛い子は、外にでちゃダメだよ」

「はぁ〜い・・・クスッ」

ハイハイハイハイ!!(力いっぱい挙手

笑いましたから、今!!
クスッて、クスッって笑いましたよ?ねぇ。

はっはーん、ちゃちゃっと退治して金せしめてやるウッシッシ

そんな笑いでしたよ今。
ねぇねぇ、おじさんそれでいいの?



「というわけで、いってこい」

「いやいやいや」

見守ってきたレスは、乾いた笑いで返答した。

うん、今日も素敵に凄み顔がキマってるね☆きゃぁ(は

「レス、困ってる人を放っておくの?」

「いや・・えとー・・」

「はぁ・・被害が出てしまえば、この尊い命が・・・」

「うぐ・・・」

落としにかかってきたな!!
でも、もう引っ掛からないもんね☆

負けるなレス!!貴女なら出来るわ!!!(自己啓発


「闘う女の子ってステキよねー?」

「ふぅん・・・」

勝った!!

「じゃぁモリナがやれば?」

やっとこのモリナに勝った!!
屈折数年の歳月を経て、勝てた・・・

「あたしは〜・・・シーズが止めるからぁ」

「・・・・・」

「ロティだって、自分の女が傷つくの見たら止めるんじゃなぁぃ?」
「まぁ、ロティだって実は心配してるのにきっかけがないのよ」
「でもロティもロティよねぇー」

そんなこんなでロティ15連発。




「あっ、あたしはやるぞっ!!やってやる!」

「きゃぁステキー・・・・キヒッ」

「いやいや、オネーサン?
ちょっとまとうよ、ねぇねぇ。
キヒッって、キヒッって・・・乙女としてどうなのよ」

「えぇー?」

「えぇって・・・」

「あたしはシーズの前でだけ乙女になるのン」

・・・・。

「あらそうですかはいはいはいはいはいはい。
やっぱ無し!!そんな惚気てる暇あるんならモリナがやれ・・・」

「最初はグー」

「!?」

「じゃんけん・・」

条件反射だ。
うん、これはしょうがないんだよ。

「あっちむいてほいッ!!!」

きっと・・きっとピュアだから向いちゃったんだってば!!









「・・・で、ロテ」

「言っとくけど!!あんなやつ関係ないからね!!
あたしは正義に憧れて、人を救うためにやるんだから!」

ビシッ!!と指差すあたし。
対して、冷めた目で見るモリナ。

「はいは〜い。
ま、所詮罰ゲームだから軽くやんなさいよ」

ひらひら、と手を振って歩いていくモリナ。
あたしは今から・・
あっち向いてホイなんかに負けて討伐にいくらしぃ・・・

くそぅ。
モリナのやつニヤニヤしちゃってさ・・・。

いくらシーズとうまくいってるからって・・


あんのぶっちょーヅラめ。
眉間に皺よせて魔術書だの古文書だの読むよりもさ。

そのー・・
たまには、さぁ。

か、か・・かかか彼女とさぁー・・
その、ね?

遊んだり喋ったり愛を語らったり愛を語らったり愛を語らったり?

・・・しないんだよなー、コレが。







「これも罰ゲームだし・・しょうがないんだよね」

手短に仕度をすると、早速森の中へと歩いていった。







「モリナ、レスは?」

「うふふふふー・・・」

「な、何だ」

「早速いっちゃうの?口説き文句〜」

「ちっ・・違う!!ちょっと気になってだな・・」

「ちょっとじゃないデショ?」

「うぐ・・・」


何となく居づらくなって、席を立つロティ。

・・・しかしモリナは見逃さない。

(・・レスが気になるんだ〜・・・♪)

仏頂面に似合わず、そわそわしてるところを見ると。
きっと部屋で口説き文句を考えてたんだろう。

そして性格上、何度か口に出してから顔を赤らめたり・・・

「ロティ・・レスならさっき森に向かって歩いていったわよ」

「森だと!?魔物が出没すると、あれほど・・・」

「あれほど・・・?」

「・・・ッ、何でもないっ」


バタン・・ダダダダダダ・・・・





あーあ、走ってっちゃった・・・

「ぷくく・・」

不吉な笑いを漏らすおとk・・乙女ひとり。















「くそっ・・きりがないッ!!」

グガェァアアアァアア・・・

「ふッ!!」

一匹飛んだと思うと、また次の一匹が・・

「はぁッ、はッ・・・」

「もう・・だめだぁ・・・」

黒い影が飛び、鋭い刃が光った・・・

反射的に目を瞑る・・・




―――ギャァェァアアア!!!


「・・・?」

ゆっくりと目を開ければ・・


そう、王子様が優しく手をとりながら・・・

「全く・・・相変わらずドジだな」

――・・・気のせい気のせい。

あれよね、きっと。

――大丈夫か?
とか聞きながら、大丈夫って言ってるのにもう!!みたいな展開?
あわよくばお姫様だっことかされたりしてー・・

大丈夫って答えたのに心配性なんだからぁーっていう・・

「・・考えるという行為を多少はしろ」

甘い妄想は い ず こ へ ・・・・


「ロティのばぁーか」

「な、何が・・・」

「ちょっとくらい・・心配してくれたっていいじゃない・・」


「・・・・・悪かった・・」




「!!」

普段謝りもしない(というか間違った行動とらないんだけど!!)
あのロティが!!

謝ったぁ!?


「頼むから・・・」

「ふぇっ・・・・・///」

ぐっと力の入る腕を背中に感じて、身動きが取れなくなる。

「側に、居てくれ・・・」

「ロテ・・・」

真っ赤な耳が、視界の端っこに映った。



「・・・・はい」

















***********

「ふぁ・・・よく寝たぁー・・・ふふっ」

昨日の出来事を回想してしまう。

ニヤける頬がどうにもならない。


『だから・・・ゲー・・・・果た・・た・・・・・ろ』

隣にいない愛しいひと。
ドアの向こうから聞こえる声。

『何・・・って・・の・・・みんな・・前で・・・無効よッ!!』

何話してるのかなぁ・・モリナも。


―――キィィ・・・

「罰ゲームなんか二度とごめんだからな!」

「何いってんのよ!おかげでラブラブでしょー?」

「ば、バカな事言うな!」

罰ゲーム・・・ってアレが?





「・・・・ロティ?」

「れ、レス・・・」

「・・・・!?」

モリナが、いない・・・。


「そこになおれぇぇッ!!!」

「違っ・・・だ、止めっ・・・」

「問答無用!!」




お昼ごはんは三人で食べました。
(モリナ、シーズ、あたしvはぁと)

end.






☆★☆★☆★☆★☆

えとー・・・もう早くも1500まわろうとしてますがごめんなさい。
1000をリクして下さったざっくんへ贈ります。

もう一気に書き上げたので後半テンションがgdgd・・
げふんげふん!!!

もう・・受け取ってください・・涙涙

へいせいじゅうはちねん
ろくがつじゅうににち げつようび

さきちゃんから、ざくろちゃんへ。